研究概要 |
生物種間で構造の異なる糖鎖は、生物が進化・多様化する過程で微生物などの感染を防ぐために変化し選択された糖鎖遺伝子の産物であると推測されている。しかしながら、現在のところヒトや全ゲノム解析の終了した動植物以外から糖転移酵素遺伝子の同定はほとんど行われておらず、生物種特異的な糖鎖多様性が生物界でどのように分布しているのかもほとんど調べられていない。そこで本研究では、ハトなどある種の鳥類が生物種特異的に発現するα-1,4-ガラクトース転移酵素(以下α-1,4-GalTと略す)を遺伝子クローニングにより同定し、生物種特異的な糖鎖がどのようなメカニズムで構築されたのか遺伝子レベルで解析することを目的としている。 1.ハト由来α-1,4-GalTの酵素活性測定法の確立 β-ガラクトース残基の付加した二本鎖のN型糖鎖をブタチログロブリンから精製し、2-アミノピリジン(PA)で蛍光標識した。ハトの様々な組織の可溶化抽出液をこの基質と一定時間反応させ、反応液を順相および逆相HPLCで分析して反応生成物を検出した。反応生成物の割合から、α-1,4-GalTの組織分布を調べたところ、様々な組織において活性が検出された。 2.ハトα-1,4-GalTの発現クローニング ハトの肝臓からcDNAライブラリーを作製し、哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込んだ。次に、293T細胞に、cDNAライブラリーをリポフェクトアミンで導入し、抗P_1抗体(Galα1-4Galβ1-4GlcNAc-特異的)および蛍光標識した二次抗体で細胞を染色し、セルソーターでGalα1-4Galを発現している細胞を選別し、プラスミドを回収した。大腸菌で増幅させたプラスミドを再度293T細胞に導入し、陽性細胞からプラスミドを回収した。この操作を3回繰り返し、最終的に単一の大腸菌コロニーからcDNAを単離した。
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