SUFマシナリーの機能の解明を目指し、生物種として大腸菌および好熱菌Sulfolobus tolodaiiに注目していた。全ゲノム配列が公開されているこれらの細菌において、大腸菌(Escherichia coli K12 MG1655)では6種の成分(SufABCDSE)、S.tokodaiiでは4種の成分(SufD'BCS)がゲノム上に存在している。本研究の目的であるSUFマシナリーの多成分複合体によるFe-Sクラスター合成機構および機能調節機構の解明に向けて、平成18年度は以下の項目を実施した。 1.多成分複合体の精製・結晶化およびX線結晶構造解析 大腸菌に由来するSufCとSufDを大腸菌内で共発現させたところ、安定な二成分の複合体を形成することを初めて見出し、この複合体の立体構造を決定した。SufCD複合体は、SufDのコアドメインから突出したC末端ドメインが、L型構造のSufCに突き刺さるような形で相互作用していた。このような複合体の形成により、SufCでは大きな構造変化が起きていた。この構造変化を詳細に検討した結果、SufCはSufDとの複合体形成に伴ってATPの結合/加水分解に適した活性型に変化すると考えられた。 2.大腸菌由来SufCへの変異導入 SufBCD複合体は、SufCのATPase活性がトリガーとなりダイナミックな構造変化を可能としている。そこで、既に明らかにしたSufCの立体構造に基づいて、SufCのATPase活性を低下させるミスセンス変異を遺伝子操作により導入し、合計30個の変異SufC発現プラスミドを構築した。
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