本研究は、基底膜蛋白質ラミニンがマウス胚性幹細胞(ES細胞)の分化にどのような影響を及ぼすかを検討することで、基底膜が細胞の分化制御にどのような役割を果たしているかを解析することを目標としている。平成18年度は、本研究の基礎となる各種ラミニンアイソフォームの精製を行った。また、複数のES細胞の系統について分化誘導条件を検討し、培養基質の効果を検討するのに適した分化誘導系の検討を行った。 1.組み換えラミニン蛋白質の精製については、ヒト293F細胞にヒトラミニンα、β、γ各サブユニット発現ベクターを導入し、分泌されたラミニン蛋白質を、特異抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。精製蛋白質はウェスタンブロット等で品質を確認した。このようにして、ラミニン各α鎖(α1〜α5)とβ1、γ1鎖を含むラミニンアイソフォームを精製した。 2.ES細胞については、野生型ゲノムを持つD3、Nkx2.5遺伝子座にGFPを導入したNkx2.5-GFP、およびその親株であるht7の分化誘導法を検討した。分化誘導にあたっては、ES細胞の自発的な分化を開始させるため、未分化ES細胞を浮遊培養し、embryoid body (EB)とよばれる細胞塊を形成させる方法を用いた。5日間の浮遊培養後にEB内部で複数の細胞系譜への分化が進んでいることを、ES細胞の分化マーカーとなる遺伝子の発現解析によって確認した。現在、EBで分化させた細胞を異なる基質上培養し、細胞の挙動および分化マーカー遺伝子発現について解析を行っている。平成19年度には、EBで分化させた細胞を各ラミンアイソフォームの基質上で培養し、それぞれのラミニン蛋白質が分化誘導または分化形質の維持にどのような効果を及ぼすかを明らかにする。
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