研究課題
本課題は、ヒトDNAポリメラーゼζ(Polζ)の構造生物学的研究である。Polζは、DNA複製時の変異導入の大部分に関与している損傷乗り越え型DNAポリメラーゼ(TLSポリメラーゼ)であり、哺乳類のTLSポリメラーゼなかで唯一、生存に必須な酵素である。Polζは触媒サブユニット(REV3)と補助サブユニット(REV7)から構成されている。また、REV7は、REV3とは独立に、REV7単独で細胞周期チェックポイントに関与する。ヒトPolζの構造解析を目指し、1)REV7単体、2)REV3触媒ドメイン、3)REV7-REV3複合体の試料調製を行った。1)REV7単体を大腸菌内で大量発現させると大部分が不溶性になってしまい、収量が少ないという問題があった。今回、大腸菌破砕時の溶液条件の検討を行い、大部分を可溶性なものとして回収することに成功した。こうして得られたREV3単体を用いて結晶化条件の検討を行っているが、現在のところ結晶は得られていない。引き続き結晶化条件の検討を進める。また、超遠心分析を行ったところ、低濃度ではREV7は単量体で存在することを明らかとした。2)ヒトREV3はアミノ酸残基数3130の単一のポリペプチド鎖からなる分子量約353kDaのタンパク質であり、誰もヒトREV3全長の調製に成功していない。よって、REV3触媒ドメインのみの試料調製を試みた。大腸菌によるいくつかの発現系を構築したが、発現・可溶化はするものの、安定性に欠け、精製標品を得ることができなかった。今後ドメインの切り出しについて、検討をする必要がある。3)REV3のREV7結合領域について、最適化を行い、REV7-REV3複合体の大量調製に成功した。えられたREV7-REV3を用いて、現在結晶化条件の検索を行っている。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
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