研究概要 |
生物は環境に適応するために外界のシグナルを受容し、生体内へ伝達する仕組みを持っている。一酸化炭素(CO)をエネルギー源として生育する嫌気性微生物Carboxydothermus hydrogenoformansは、CO代謝にかかわる一連のタンパク質の発現を制御するシステムをもっており、そのなかでCooAタンパク質はCO依存的にDNAの転写を制御する役割を担っている。CooAは221アミノ酸残基からなるヘムタンパク質であり、二量体として機能する。COによりその機能が制御されているため、CooAタンパク質の機能発現およびCOによるDNA転写制御においては、分子中に含まれるヘムが重要な役割を果たしていると推定されるものの、その詳細な分子機構は明らかにされていない。本研究では、ヘムによるCOセンシングと詳細な転写制御機構を明らかにするために、C.hydrogenoformans由来CooA(Ch-CooA)のX線結晶解析を行った。結晶化に用いたCh-CooAはHis-tag融合タンパク質として大腸菌で大量発現させ、Ni-NTAカラムとHeparinカラムによって精製した。Ch-CooAは凝集しやすく高塩濃度下で安定であるため、1M NaCl存在下で結晶化スクリーニングを行った。その結果、沈殿剤としてポリエチレングリコールを用いた条件で結晶化に成功した。実験室でのX線回折データ測定の結果、約2.3Åの分解能を有していた。結晶は単斜晶系に属し空間群P21、格子定数はa=61.8Å,b=94.7Å,c=92.8Åand・=104.8°であった。非対称単位中に2つのCh-CooA二量体が存在する。ヘム鉄の異常分散を利用してSAD法による位相決定を行い、Ch-CooA分子モデルを構築した。構造精密化によって、最終的な結晶学的R値は20.9%となった。
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