| 研究概要 |
生物は環境に適応するために外界のシグナルを受容し,生体内へ伝達する仕組みを持っている。一酸化炭素(CO)をエネルギー源として生育する嫌気性微生物Carboxydothermushydrogenoformansは,CO代謝にかかわる一連のタンパク質の発現を制御するシステムをもっており,そのなかでCooAタンパク質はCO依存的にDNAの転写を制御する役割を担っている。CooAは221アミノ酸残基からなるヘムタンパク質であり,二量体として機能する。COによりその機能が制御されているため,CooAタンパク質の機能発現およびCOによるDNA転写制御においては,分子中に含まれるヘムが重要な役割を果たしていると推定されるものの,その詳細な分子機構は明らかにされていない。本研究の目的は,ヘムによるCOセンシングと詳細な転写制御機構を明らかにすることである。昨年度,ヘム鉄の異常分散を利用してSAD法による位相決定を行い,CO非結合型のCh-CooA分子モデルを構築した。その結果,COの結合が引き金となり,CooAタンパク質のドメインが大きく構造変化する活性化機構が予想された。本年度は,CO結合型CooAの構造解析を行うために,CO結合型CooAサンプルの調整と結晶化を行ったが,構造解析に適する結晶を得ることはできなかった。そこで,NMRによる立体構造解析を試みるため,同位体標識されたCO結合型CooAサンプルの調整を現在進めている。
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