研究概要 |
本研究課題は,分子シャペロンの一つであるHsp110の分子機構を構造生物学的手法によって解明することを目的とする。分裂酵母由来の細胞質Hsp110全長タンパク質を精製し,結晶化条件の検索および最適化を行ったところ,回折実験に使用できる結晶が得られた。放射光施設SPring-8の挿入光源ビームラインBL41XUにてNative結晶およびSe-Met誘導体結晶について回折データ収集を行い,最高分解能それぞれ4.0Å,4.4AÅの回折データを得ることに成功した。これらのデータと既知の構造の情報を用いて位相付けを行い,モデリング,構造精密化を現在進めている。現段階では,C末端約50アミノ酸残基の領域が電子密度図で確認できないこと,また,ヌクレオチド結合部位にはヌクレオチドが結合していないことが分かっている。さらに, Hsp110は結晶中で二量体を形成しており,ゲルろ過クロマトグラフィーと動的光散乱による解析の結果を考慮すると,これは溶液中での状態を反映していると考えられる。構造解析と平行して行っている機能解析によって,これまでに報告されているHsp70との共同的な細胞質内タンパク質の機能について,Hsp110がHsp70のヌクレオチド交換因子として働くことが昨年度までの研究で分かっていたが,この二量体形成の様式はHsp70との相互作用を模しており,今回の結晶構造によりヌクレオチド交換反応機構モデルが得られた。
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