1.我々が構築した膜蛋白質のキメラ体を用いて、膜貫通配列2本および膜透過途中の親水性配列2本が膜を貫通した新規膜組み込み中間状態を形成できている。2本の親水性配列の分子環境を調べるために部位特異的化学架橋実験を行ったところ、両方とも膜透過チャネル(トランスロコン)本体であるSec61αと近接していることが分かった。Sec61α単独では孔のサイズも小さくこれらを許容できないが、Sec61α同士もしくは別の因子との会合によって膜内に比較的大きな親水環境を形成していることが示唆された。(論文投稿中) 2.アミノ末端側を膜透過させる膜貫通配列(SA-I)について、アミノ末端側ドメインにストレプトアビジンと親和性の高い配列(SBPタグ)を付加することで、これらの相互作用によりアミノ末端を細胞質にトラップし膜透過を阻止できる。SBPタグを部分的に削ると親和性が低下し膜透過阻止効果も減少するが、この時の親和性をSPR法によって正確に測定し、膜透過反応における速度論的パラメータを取得した。(論文投稿準備中) 3.アンフォールディングに必要な物理的力が測定されているtitinタンパク質の127ドメインをSA-Iのアミノ末端側に付加しても、これらを小胞体内腔へと膜透過できる。アンフォールディングしやすい変異体ほど膜透過しやすいことから、ほどけて紐状態になりつつ膜透過すると予想された。またSA-1の膜貫通ヘリックス形成を妨げる変異により膜透過効率が低下することから、SA-1がヘリックスを形成しつつ脂質環境に落ち着く際の安定化エネルギーが膜透過の駆動に作用することが示唆された。(論文投稿準備中)
|