研究概要 |
●アミノ末端側をオルガネラ内腔に配置する膜貫通配列(I型シグナルアンカー(SA-I)配列)の小胞体膜組み込みにおいて、アミノ末端側ドメインは合成完了後に膜透過する。我々は以前に、このドメインにストレプトアビジン(SAv)との親和性の高い配列(SBPタグ)を融合することで、細胞質側に添加したSAvによって膜透過を一時停止できることを報告した。この膜透過はSAvの濃度依存的に阻害されるが、膜透過のSAv感受性から透過駆動力を見積もる実験系を立ち上げ、膜透過におけるSA-I配列の作用を調べた。その結果、SA-I配列へのプロリン残基挿入、及びSA-I配列とSBPタグとの距離を広げることで、透過駆動作用が著しく減少した。これら0結果は、SA-I配列がその上流の一定範囲の膜透過に直接関与する可能性を示している。(Kida, et.al, JBC 2009) ●小胞体における膜タンパク質の組み込みは、各膜貫通配列がタンパク質膜透過チャネル(トランスロコン)から脂質環境へと横方向に離脱していくことで起こると考えられている。我々が構築した膜組み込み中間状態形成技術と、部位特異的に配置させたシステイン残基への化学修飾性からその領域の水環境を検定する方法を組み合わせることで、SA-I配列がトランスロコン内親水環境から脂質内疎水環境へと移行する過程の追跡が可能となった。また同様の実験から、トランスロコンにおいて少なくともポリペプチド鎖2本分の親水環境が形成されうることが示され、活性状態では予想以上のキャパシティーを発揮することが示唆された。(Kidaら、投稿準備中)
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