蛋白質中に天然に含まれるシステインやメチオニンが持つ硫黄原子の異常分散シグナルを利用して位相決定を行う低エネルギーSAD法に関する実験・解析手法の開発を行なった。標準サンプルとしてこれまで評価実験に用いて素性のよく分かっているEmp46pと呼ばれる蛋白質の結晶を用いたが、結晶化の再現性を取ることが難しく、思うような量の結晶を得られることが出来なかった。この中で以下に示すレーザー加工技術の利用、及び複数の結晶からの回折データの足し合わせ・平均化によるデータ精度の向上についての検討を行なった。 1.結晶のレーザー加工技術の利用 Emp46p結晶のレーザー加工を試みたが、結晶をうまく加工することが出来ず、回折実験での評価を行なうことができなかった。同時に行なったリゾチーム結晶の加工は容易に進めることが出来たことから、Emp46pの分子自身、もしくは結晶化条件がレーザー加工に適さなかった可能性が考えられた。リゾチーム結晶に関しては加工したものを放射光X線を用いてデータセット収集を行い、東方的なデータを取ることが可能であることを確認した。 2.複数の結晶からの回折データの足し合わせ・平均化の効果の検討 前述のとおり、結晶化の再現性の問題でデータセット数を蓄積することができなかったため、具体的な効果というものはまだ見ることができていない。現在、限られたデータセット数ではあるが足し合わせ・平均化の検討を行なっているところである。 今後さらに多くのデータセット数が必要であり、Emp46pに替わる標準サンプルの選定を進めているところである。
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