研究概要 |
「遺伝情報翻訳装置である超分子複合体リボソームの構造・機能解析」という研究テーマにおいて、平成19年度の実験計画に従って以下に記述する実験を実施した。最終的な目的は遺伝情報翻訳装置であるリボソームの構造を原子分解能で解明し、その機能の詳細を明らかにしていくことにある。タンパク質等のX線結晶構造解析を行うためにはターゲットサンプルの大量調製、精製、結晶化を行う必要がある。実験実施者はターゲットに真核生物のリボソームを選びその大サブユニット(60S)および小サブユニット(40S)の大量精製に成功した。それぞれ結晶化スクリーニングを行ったところ小サブユニット(40S)において結晶を調製することに成功した。国内では最強輝度にあるSPring-8(兵庫県播磨)BL41XUビームラインを使用して回折実験を行ったところ、最高で4.2オングストロームの反射を確認した。しかしながら結晶格子が(230,230,750)オングストロームと巨大なため反射のオーバーラップを回避するには0.2deg/10sec/imageと測定に多大な時間がかかってしまうという問題に遭遇した。X線ダメージも大きいため一カ所当たり数分以下しか照射できずに、一連のデータセットを収集することが非常に困難であった。実際に初期においては4.2オングストロームの反射が観測されるが、10枚程度で急速に回折能力が低下し結局分解能はせいぜい6-7オングストローム程度のデータしか得ることができず、重原子等を使用した構造解析を非常に困難にしている。すでに1000個を超える結晶をビームラインで測定しているが、結晶中の溶媒含有量が多いためかクライオ条件が微妙で繊細であり、ひとつの重原子条件を検討するのも複数の結晶が必要となる。以上の問題点を解決しながら今後とも研究を継続していく必要がある。
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