研究課題
1.IκB-ζ mRNAの刺激依存的な安定化に関わるシグナル伝達の分子機構の解明本年度は、IκB-ζのmRNAと同様に、CpGDNAによる刺激に応答してそのmRNAが安定化され、poly(I:C)刺激では安定化されない遺伝子であるMIP-2 mRNAに関して、その安定化に関する検討を行った。IκB-ζ mRNAは比較的長く、タンパク質をコードしている部分を含む複数の安定化に関わるシスエレメントが示唆されているのに対して、MIP-2のmRNAの刺激に応答した安定化は、3'の非翻訳領域にのみ存在することが明らかになっているため、解析が容易であると予想されたことが主な理由である。まず、MIP-2自身のプロモーター、mRNA全長および転写終結に必要な配列を含むトランスジーンを安定に導入した細胞株を構築した。この細胞をLPS等のToll様受容体のリガンドで刺激したところ、ゲノム由来の本来のMIP-2の発現同様にCpG DNAやLPS等のMyD88を要求するリガンド特異的な発現誘導が観察された。さらに、このmRNA全長をコードするトランスジーンのうち、タンパク質のコード領域をGSTのコード領域の一部に置換したものを構築して検討を行っても同様の発現特異性が観察された。2.IκB-ζによる標的遺伝子の発現制御の分子機構の解明まず、IκB-ζの遺伝子欠損細胞(主に骨髄由来のマクロファージと胎生繊維芽細胞)における種々の炎症性遺伝子の発現誘導の検討を行ったところ、細胞種や培養条件に関わらず障害される遺伝子と、これらの条件により障害の程度が異なる遺伝子とが明らかになった。また、炎症性の刺激とは独立にIκB-ζの発現を誘導する系を構築して、IκB-ζの関わる遺伝子発現の特性を解析したところ、標的遺伝子の発現には、IκB-ζの発現誘導だけでは不十分で、それに加えて炎症性の刺激が必要であることが明らかになった。さらに、炎症性の刺激により活性化される分子としては、NF-κBが重要であることが判明した。
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J. Exp. Med. 203 (11)
ページ: 2413-2418