本研究の目的は、出芽酵母を用いてヘム輸送欠損変異解析を行い、新規ヘム輸送因子を同定し、合成の場であるミトコンドリアから細胞質ヘムタンパクへと至るヘム輸送経路を明らかにすることである。Hap1はヘム結合によって活性をもつ転写活性化因子である。Hap1がCYC1のプロモーター領域(UAS1)へ結合することによって、CYC1転写活性が上昇する。CYC1/UAS1とHap1を利用して、ヘム輸送変異スクリーニングを行うことを計画した。初めにスクリーニングに適した細胞内ヘム濃度を調節するため、ヘム合成律速酵素Heml(5-アミノレブリン酸(ALA)合成酵素)を欠損させた。CYC1/UAS1-LacZをもつプラスミドをHEM1欠根株へ導入しLacZ活性を測定すると、ALA濃度が5μg/mlではその活性は低かったが250μg/mlでは非常に高く、添加するALAの濃度調節によってHap1活性を設定できることがわかった。CYC1/UAS1-URA3レポーター遺伝子2コピーとHAP1遺伝子1コピーをHEM1欠根株のゲノム中へと挿入し、レポーター株を構築した。レポーター遺伝子及びHAP1遺伝子を2コピー導入する理由は、目的遺伝子以外の変具株を単離する可能性を排除するためである。レポーター株を0.25%5-フルオロオロト酸(5-FOA:URA3発現株は生育できない)を含む培地上で培養すると、ALA200μg/mlでは生育できないが、ALA25μg/mlでは生育可能となった。即ち5-FOAを含む培地において、ALAが高濃度ではHap1活性が昂進しURA3が高発現され生育できないが、ALAが低濃度ではURA3発現が抑制され生育可能となることが示唆された。今後0.25%5-FOA、200μg/ml ALAの条件で生育できる変異株を単離し解析することでヘム輸送機構の解明が期待される。
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