研究課題
本年度は、昨年度の研究によって明らかになった光化学系II反応中心タンパク質D1をコードする3つの遺伝子ホモローグのうち、通常条件では発現しないpsbA_3産物(D1-3)で構成される光化学系IIの方が恒常的に発現しているpsbA_1由来のD1(D1-1)で構成される光化学系IIよりも水の酸化活性が高い理由について調べた。材料にはpsbA_3のみを発現させるためにpsbA_1とpsbA_2を破壊した好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongarusの組換え体と、psbA_1が発現する野生株を用いた。360アミノ酸から成るD1-1とD1-3では、20残基が異なっている。これら違いのうち、電子伝達コファクターであるPheoと水素結合できる距離にある130番目のアミノ酸がD1-1ではG1n、D1-3ではG1uである。また、Q_Bから約10Aの距離にある212番目と270番目のアミノ酸がD1-1ではそれぞれCysとSerであるのに対し、D1-3ではSerとAlaである。そこで、Pheo-/Pheoの酸化還元電位の違いを熱発光で測定したところ、D1-3の方がD1-1よりも酸化還元電位が高くなっていることが分かった。更にP_<680>とPheoの電荷分離速度を測定したところ、D1-3の方が速くなっていた。また、Q_B結合部位に結合できる化合物であるDCMUおよびブロモキシニルを単離した光化学系IIに結合させて電子伝達を阻害して水の酸化活性を測定すると、D1-1に比べてD1-3へのブロモキシニルへの親和性が高かった。以上の結果より、D1-3で構成される光化学系IIの方がD1-1で構成されるものよりも高い水の酸化活性を持つのは、Pheoの電位が高いためにP_<680>との電荷分離が速くなるためであることが明らかになった。Q_B結合部位の違いが直接水の酸化速度に関係するとは考えられないが、この違いについては今後の課題としたい。
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