当初研究計画に従って、下記の研究結果を得た。 下記番号は研究目的・研究実施計画書の番号に対応させた。 1.Na^+非結合型NtpKリングのX線結晶構造解析---精製したNtpKリングにDCCDを反応させNa^+結合に重要なグルタミン酸残基を修飾することにより、Na^+結合能が大幅に減少していると考えられる。この状態で結晶化に成功し、SPring8放射光を利用して解像度2.8Åでのデーターセットを得ている。今後は結晶構造解析を行う。 2.阻害剤結合型NtpKリングのX線結晶構造解析---本酵素はPalAというV-ATPaseの特異的阻害剤により阻害される。ソーティング法によりこの阻害剤をNtpKリングと結合させて、X線結晶構造解析を行った。しかし、PalAと考えられる電子密度は存在していなかった。今後は共結晶化を試みる。 3.Li^+結合型NtpKリングのX線結晶構造解析---本酵素は共役イオンとしてLi^+も結合できることが知られている。Li^+存在下、Na^+非存在下でNtpKリングの結晶を得た後、Na^+結合型NtpKリング構造情報を使って、分子置換法により位相を決定した。2.8Å分解能でLi^+結合型NtpKリングの構造を解くことに成功した。本酵素の基質結合ポケットは、Li^+をNa^+結合のときと同じ残基を使って同様に結合していた。Na^+のイオン半径は1.16Å、Li^+は0.9Åである。Na^+よりイオン半径の小さいLi^+は、容易に結合ポケット内に入り込み、Li^+--イオン結合残基間の距離をNa^+のときよりもわずかに近づけることによりポケット内に安定に存在することができると考えられた。 5.真核細胞V型ATPaseのロータリーリングのX線結晶構造解析---ヒト由来cサブユニットをクローニングし、大腸菌無細胞系を用いて発現させ、有機溶媒中での精製系を立ち上げた。今後は構造解析を目指す。
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