当初研究計画に従って、下記の研究結果を得た。 下記番号は研究目的/研究実施計画書の番号に対応させた。 1. LNa^+非結合型NtpKリングのX線結晶構造解析-精製したNtpKリングにDCCDを反応させNa^+結合に重要なグルタミン酸残基を修飾することにより、Na^+結合能が大幅に減少していると考えられる。本年度はNa^+を含まない結晶化試薬を用いて結晶化・構造解析を行った。得られた構造にもNa^+が結合していることが示唆された。^<22>Na^+を用いてその結合親和性を測定したところ、DCCD反応前よりも10倍程度親和性が低下しているが、Na^+を結合できることが明らかとなった。DCCD反応後でもリングへのNa^+の結合解離が可能であり、そのメカニズムは以前提案した側鎖開閉モデルを指示する結果であった。 2. 阻害剤結合型NtpKリングのX線結晶構造解析-本酵素はPalAというV-ATPaseの特異的阻害剤により阻害される。精製NtpKリングとPalAとの共結晶をソーキング法により作製し、X線結晶構造解析を行った。しかし、得られた回折データの分解能が低く(4Å程度)PalAと考えられる電子密度を見つけることができなかった。 3. 真核細胞V型ATPaseのロータリーリングのX線結晶構造解析-前年度、ヒト由来cサブユニットをクローニングし、大腸菌無細胞系を用いて発現させ、有機溶媒中での精製系を立ち上げた。NMRによる有機溶媒中での構造解析を行ったところ、ヘリックス様の立体構造を保持していることが示唆された。
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