細胞質分裂における収縮環収縮の分子機構を探るために、今年度はまず、収縮環のアクチンをサブ領域ごとに可視化し、収縮環の形成・消失過程を追跡した。 1.スペックル顕微鏡法を用いた収縮環アクチンのリアルタイム観察 予備実験としてa)微量のAlexa488-actinを顕微注入した、b)極微量発現プロモーター(pdelCMV、京都大学渡辺直樹助教授より分与)下流に連結したeGFPアクチン融合タンパク質を発現させた、ほ乳類培養細胞を共焦点顕微鏡でリアルタイム観察し、間期アクチン構造の単分子スペックルの運動を観察した。これを、細胞周期のうちのわずかな期間に形成される収縮環のスペックル観察に適用するため、条件の改良を行った。まずeGFPをアクチンのN末端にタンデムに連結しpdelCMV下で発現させることによりシグナル強度を増した。さらに、複数の細胞種を観察し、比較的扁平性を保ちながら細胞質分裂を完了する細胞としてLLC-PK1細胞を選択した。これらにより、収縮環収縮時のアクチン分子のスペックル観察に初めて成功した。 2.mKiku-GR-actinによる局所変色収縮環の3次元リアルタイム観察 UV照射により不可逆的に赤変する緑色蛍光色素、mKiku-GR(理化学研究所 宮脇チームリーダーより分与)を連結したアクチンをほ乳類培養細胞で発現させ、収縮環の特定領域をレーザーでスポット照射した。これを光学セクショニング顕微鏡により3次元タイムラプス観察し、緑色蛍光アクチンの中に局所的に存在する赤色蛍光アクチンの挙動とその分散過程を追跡した。これらの結果、「purse strings model」では説明できない複雑なアクチン繊維の挙動が認められた。また、収縮環を形成するアクチンの分子交換速度が、収縮環の収縮過程で変動する可能性が示唆された。
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