細胞質分裂における収縮環は、分裂期に一過的に構成され、収縮し、細胞が二分されると消失する。収縮環の収縮の分子機構を探るために、今年度は収縮環の主軸となるアクチンと色変換性蛍光タンパク質との融合タンパク質を利用して、そのダイナミクスを追跡した。 1. mKiku-GR ・actinによる局所変色収縮環の3次元リアルタイム観察 UV照射により不可逆的に赤変する緑色蛍光色素、mKiku-GR (理化学研究所 宮脇チームリーダーより分与)を連結したアクチンをほ乳類培養細胞で発現させ、収縮環の特定領域をレーザーでスポット照射した。これを光学セクショニング顕微鏡により3次元タイムラプス観察し、緑色蛍光アクチンの中に局所的に存在する赤色蛍光アクチンの挙動とその分散過程を追跡した。しかし、mKiku-GR -actinは観察時の退色性と細胞内で発現させた時の毒性が大きく、観察は困難であった 2.上記の問題を解決するため、新たな色変換性蛍光色素、Dendra・2を連結したアクチンをアフリカツメガエル培養細胞にて発現させた。退色性と細胞内毒性については、Dendra・2-actinはmKiku-GR・actinよりも良好であった。上記1と同様に収縮環の特定領域をレーザーでスポット照射し、その分散過程を3次元的に追跡した。その結果、収縮環上の変色スポットは収縮の進行とともに素早く分散・消失するのが観察された。このような挙動は比較的安定とされるストレスファイバー上の変色スポットでは認められなかったことから、収縮環上でのアクチン分子のダイナミックなターンオーバーを反映しているものと考えられた。
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