研究概要 |
細菌べん毛モーターの回転は、イオン流に共役した回転子と固定子の間のダイナミックな相互作用で生じると考えられている。我々は、固定子の形や自己集合、固定子内のイオン流とそれに共役した回転子との相互作用を、生化学的手法により明らかにすることを目的として3年間研究を進めてきた。 海洋性ビブリオ菌は、菌体の極にNa^+駆動型の極べん毛を1本だけ生やし、そのモーター構成タンパク質は極局在する。我々は、GFPを融合させた固定子蛋白質PomAまたはPomBを用いて固定子の挙動をin vivoで観察し、固定子複合体のモーターへの集合解離が共役イオン(Na^+)に依存することを明らかにし、先日論文を発表した(Mol. Microbiol. 71 : 825-835, 2009)。昨年度はGFP融合固定子を用いて、我々が単離してきた、回転力を欠損する変異がモーターへ集合に関与しているかを検討したところ、回転子側のFliGの変異R317Dにより、固定子の極べん毛基部への集合が著しく阻害されることを見いだした。この結果は固定子の回転子周囲への集合において、回転子であるFliGがターゲットのひとつとして関与していることを示唆し、固定子-回転子相互作用を間接的であるが裏付けている。現在FliGにおける更なる変異導入実験により、FliGと固定子の集合の関係を詳細に調べている。 また、昨年度に引き続き固定子-回転子間の弱い相互作用を検出することを目的として、MF-20を用いた蛍光相関分光法(FCS)による解析系の立ち上げを行ってきた。膜タンパク質が関与する相互作用の解析のために、回転子側の膜蛋白質FliFと可溶性のFliGの相互作用をまず解析しようと試みている。現在、HiFの大量発現と粗精製、およびFliGの精製と蛍光標識まで成功した。これから実際のFCS解析を試みる予定である。
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