(1)錐体でG蛋白質活性化反応の効率が低い理由の解析 これまでの我々の研究で、錐体において、光受容体蛋白によるGtの活性化反応の効率は、桿体の1/30であることが解った。この現象は、錐体型光受容蛋白、錐体型Gtのいずれかの性質に起因すると考えられる。どちらが原因となっているのか明らかにするため、以下の実験を行なった。 実験A:桿体から桿体型Gtを精製し、これを錐体膜に加えた試料を調製した。この試料で、錐体視物質が桿体型Gtを活性化する効率を測定した。その結果、その効率は、錐体視物質が錐体型Gtを活性化する時の効率の2倍程度でしかないことが解った。この結果は、錐体型光受容蛋白がGtを活性化する効率そのものが低く、そのことが錐体でG蛋白質活性化反応の効率が低い現象の一因であることを示唆している。 実験B:桿体型視物質を加えた錐体膜試料を作製し、この試料において桿体型光受容蛋白が錐体型Gtを活性化する効率を測定した。その結果、桿体型光受容蛋白による錐体型Gtの活性化効率は非常に低いことが解った。このことから、錐体での低い活性化効率の原因が錐体型Gtにもあることが示唆された。 (2)錐体でPDE活性化反応の効率が低い理由の解析 視細胞で、活性型GtはPDEを活性化する。錐体では、この反応の効率が桿体より低い(約1/10)ので、錐体の感度を低くする一因となる。錐体で効率が低いのは、錐体型Gt、錐体型PDEのいずれかにあると考えられる。そのどちらが原因なのか明らかにするため、以下のような実験を行なった。まず、桿体試料から、活性化された状態の桿体型Gtを精製した。この桿体型Gtが、桿体、錐体のPDEを活性化する効率を測定した。その結果、桿体型Gtは、桿体型、錐体型のPDEを同程度に活性化した。このことは、錐体においてPDE活性化反応の効率が低い理由が、PDE側でなくGt側にあることを示唆している。
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