(1)錐体でのトランスデュユーシンの不活性化効率の精密測定、効率決定機構の解析 活性型トランスデューシン(以降、Gt^*と略記)の不活性化反応は、視細胞(錐体および悍体)の光応答が停止する上で必須の反応であり、この反応の効率は光応答の長さを決定する要因となると考えられる。また、錐体の光応答は、悍体の光応答よりも短い。これらのことから、錐体では、悍体と比べてGt^*が高い効率で不活性化されると予想されていた。今回、錐体ではGt^*が悍体と比べて40倍以上速やかに不活性化されることが解った。この効率の差は、錐体の応答の短さを説明するに十分である。 この効率が錐体で高い原因としては、Gt^*の不活性化促進因子RGS9の量が錐体で多いためだろうと予想されていたが、今回、錐体・悍体に存在するRGS9の絶対量を測定することにより、、RGS9の量が確かに錐体で多いことが解った。また、GtとRGS9の存在量の比の推定を行い、錐体ではGtの量に対してほぼ同じオーダーのRGS9が存在することを明らかにした。 (2)錐体での活性型PDEを不活性化する速度の測定 PDEは、Gt^*により活性化され、光応答を引き起こす。光応答の終息には、PDEが不活性化される必要があるが、その不活性化は、Gt^*の不活性化に伴って受動的に生じると考えられてきた。今回、Gt^*の不活性化によらない、PDE独自の不活性化メカニズムが存在するか検討した。しかし、そのような分子機構の存在は確認できなかった。 (3)酵素反応の調節する因子の分子内メカニズムの検討 視細胞において、光によって活性化された視物質は、視物質リン酸化酵素(GRK)によりリン酸化され、不活性化される。この反応は、光応答の終息に必須である。この反応をひきおこすGRKの酵素活性を調節しているS-modulin/s26と呼ばれる蛋白質が、どの部位でGRKと相互作用をしているのかを解明した。
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