研究概要 |
アミロイドとは、約40個のアミノ酸からなるペプチド(Aβ)が凝集し線維構造を形成したもので、神経細胞毒性を有する。アルツハイマー病患者の脳内に見られるアミロイドの量は、アポリポタンパクE(ApoE)の三種類の遺伝子型(E2,E3,E4)に依存する。なかでも、脳内AβアミロイドはE4型で最も多く観測され、アルツハイマー病の危険因子とされている。よって、ApoEはアミロイド形成を制御する重要な蛋白質であると示唆されるが、その詳細な機構に関しては明らかでない。そこで本課題では、ApoEがAβアミロイド形成・分解過程に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 本年度は、ApoE蛋白質がAβアミロイド形成過程に及ぼす影響を検討するために、ApoE蛋白質の大腸菌発現用プラスミドを作成し、三種類のアイソフォーム(E2,E3,E4)を含む再構成ApoE蛋白質の発現・精製を行った。また、大腸菌を用いた再構成システムによりAβペプチドを大量に得る手法を開発した。再構成Aβペプチドはインキュベート開始後、一定時間経過するとThioflavin-Tと結合し蛍光を発することが分かった。また、原子間力顕微鏡を用いることで、直径が約10nmの線維状凝集物を形成していることが観察され、大腸菌を利用した再構成Aβペプチドはアミロイドを形成することを確認した。ApoE蛋白質単独では線維状凝集物の形成を確認できなかったが、ApoE蛋白質はAβペプチドのアミロイド化を遅らせる効果があることが明らかとなった。現在、in vivoでのAβアミロイド形成・分解におけるApoE蛋白質の役割を検討するために、各ApoEアイソフォームを発現するノックインマウスを作成中である。
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