本研究の平成19年度の目標は汎用型FRETプローブ(TdFRET-tag)を用いて、様々なFRETセンサーを作成し、その有用性を実証することである。センサーの作製に用いた蛋白質は、IP3受容体のリガンド結合部位、カルシウム結合蛋白質・Calmodulin、Calmodulinとその結合部位M13の融合蛋白質、M13、IP3-3kinase、IP3-5phosphatase、スモールG蛋白質・ARF6、ホヤの電位依存性脱リン酸化酵素・ciVSP、分泌小胞輸送に関わるSynaptotagminに対する一本鎖抗体、以上の9つの蛋白質にTdFRET-tagを遺伝子上で融合し、培養細胞に発現させて、それぞれの蛋白質の活性化に合わせたFRET変化が起こるかどうかを確認した。その結果、IP3-3kinase、IP3-5phosphataseの2つはFRET変化を示さなかったが、たの蛋白質ではFRET変化を観測することができた。特にM13と融合させた場合には、COS-7細胞を10μMのATP刺激した際の細胞内のカルシウム濃度変化に伴い、蛍光顕微鏡上で36±8%のFRET変化を観測した。これは細胞内のカルシウムと結合したCalmodulinとの結合により引き起こされるため、カルシウム-Calmodulinセンサーとして研究に用いることが可能である。このように本研究で開発したセンサーは、万能ではないが、幅広いタンパク質に適用可能なFRETセンサーであることを実証し、またそれを用いて実用レベルのバイオセンサーを開発することにも成功した。
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