研究概要 |
「研究目的」 出芽酵母ヒストンH3の56番目のリジン(H3 K56)のアセチル化はRtt109ヒストンアセチルトランスフェラーゼRtt1O9およびヒストンデアセチラーゼHst3,Hst4によって細胞周期依存的に制御され、DNA複製期に起こるDNA損傷、特にDNA複製時に生じる二重鎖切断修復に関与している。本研究ではヒストンH3 K56のアセチル化の制御およびDNA損傷修復能がの生物種にも保存されているかどうか、よりヒトに近い分子機構を持つ分裂酵母をモデル生物として解析をおこなった。 「研究成果」 出芽酵母同様、分裂酵母ヒストンH3でも保存されている56番目のリジンにアセチル化が起こることを確認した。さらにはDNA複製フォークの停止に伴うDNA損傷修復を促進するために修復完了までこのH3 K56のアセチル化がクロマチン中に保持される。また分裂酵母でもヒストンアセチルトランスフェラーゼrtt109を,ヒストンデアセチラーゼhst4+がH3 K56のそれぞれアセチル化、脱アセチル化に関与することを示した。このように出芽酵母のH3 K56のアセチル化によるDNA損傷修復の機構が分裂酵母にも保存されていることを示した。 「研究の意義および重要性」 出芽酵母H3 K56のアセチル化制御およびDNA修復機能がよりヒトなどの哺乳動物に近い生体分子機構を持つとされる分裂酵母でも保存されていることが明らかになったことは、他の生物種でもH3 K56のアセチル化による細胞能が保存されていることを示唆するものである。本研究の進展はヒトなどでみられるDNA損傷が原因とされる正常細胞から癌細胞への形質転換機構あるいは早老症などの様々な疾患あるいは遺伝病に対してヒストン修飾酵素を入為的に制御することでヒストン修飾をターゲットとしたあたらしい治療法の確立へとつながることが期待される。
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