古細菌におけるDNA複製開始反応のメカニズムを明らかにするため、「複製関連蛋白質同士の相互作用ネットワークの解明」および「精製蛋白質と複製起点DNAを用いたDNA複製初期過程の再構成」を目指し研究を遂行した。 出芽酵母2-ハイブリッド法を用いパイロコッカスのCdc6/Orc1、Mcm、GINSと相互作用する因子を探索した。そこで得られた遺伝子産物を情報科学的手法によって解析し、実際にDNA複製に関連すると考えられる因子を絞り込んだ結果、Cdc6/Orc1で3つ、Mcmで3つ、GISNで4つの因子が得られた。また、DNA複製関連因子が働く場である染色体DNAの構造を解析するために、パイロコッカスにおけるクロマチンDNAの分画法を確立した。この方法を利用して古細菌におけるクロマチン構成タンパクク質の同定が可能となった。 つぎに、Cdc6/Orc1タンパク質が複製起点に結合するメカニズムを明らかにするため、精製タンパク質を用いてDNA結合活性を解析した。その結果、Cdc6/Orc1タンパク質は複製起点の繰り返し配列(ORB)を特異的に認識する事がわかった。ORB配列は複製起点内に二つ、約1.5kbはなれた場所にもう一つ存在するが、いずれの配列に対しても特異的に結合した。さらに、複製起点内に存在して、ORBと共通の配列を持つがより短いmini-ORB配列への結合を検討したが、ORBに比べると結合親和性が落ちていた。ORB配列を持たないDNAに対してCdc6/Orc1はほとんど結合活性を示さなかった。このことから、Cdc6/Orc1タンパク質のDNA結合活性におけるORB配列の重要性が明らかとなった。
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