研究課題
染色体の複製開始反応は細胞周期中ただ1回のみ起こるよう厳密に制御されている。大腸菌DnaAはATP結合型で複製開始を引き起こす。DnaAに結合したATPは、DnaA不活性化因子HdaとDNA装着型クランプ(DNAポリメラーゼIIIβサブユニット)とに依存して加水分解され、不活性なADP結合型DnaAが産生する。このDnaA制御システムはRIDAと呼ばれ、重複複製を抑制するために必須である。本研究ではまず、hda翻訳がこれまで推測されていた開始コドン(GUG)よりも15コドン下流に位置するCUGから開始していることを見いだした。大腸菌において翻訳効率が著しく低いCUGを開始コドンとして利用している遺伝子はこれが初めてであり、Hdaの細胞内量が氏いことと関連していると思われる。同定した開始コドンより翻訳したHdaは高活性体として精製された。さらにdaは、ADP特異的に結合能を示し、ATPや他のヌクレオチドとは結合しないというユニークな性質を持っていた。ADP結合型Hdaは単量体として存在し、RIDA再構成系においてDnaA結合ATPの加水分解活性を示した。一方、DP非結合型HdaはRIDAに不活性なホモ多量体を形成した。DNA装着型クランプとの結合能はADP結合型、非結合型Hdaに関わらず見られたものの、続くDnaAとの相互作用にはADP結合型Hdaが必要であった。おそらく、DP結合によるHdaの活性化には、モノマー化によるDnaA相互作用部位の露出が関与していると考えられる。さらに我々は細胞内においてもHdaがADP結合型として存在していること、またADP結合がHdaの細胞内機能に重であることを見いだした。以上の結果はHdaがADP結合1解離を通してDnaA不活性化システムの発動を制御するスイッチとして働く可能性を提唱するものである。
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Genes Dev. 21
ページ: 2083-99