オートファジーは、細胞が限られた栄養条件下を生き抜くために必須の応答機構である。オートファジーが誘導されると、オートファゴソームと呼ばれる二重膜構造が細胞質成分を包み込み、それらをリソソーム/液胞といった分解コンパートメントに輸送し分解する。オートファゴソームによる包み込みは基本的に非選択的であるが、近年、特定の蛋白質やオルガネラを選択的に取り込むタイプのオートファジーが複数例報告され、注目を集めている。しかし、その分子機構についてはほとんど明らかとなっていない。本研究では、出芽酵母をモデル生物として、オートファゴソーム形成に必要である、Atg8というユビキチン様蛋白質に着目し、オートファゴソームへの"積荷"の選択的取り込み機構を分子レベルで明らかにすることを目的とする。酵母のアミノペプチダーゼI(API)は、Atg19受容体蛋白質と結合し、オートファゴソームに選択的に取り込まれる積荷である。一方、Atg8はオートファゴソーム膜に局在し、Atg19と相互作用することから、オートファゴソームへのAPIの選択的取り込みに関与する可能性が示唆されている。申請者は、Atg8にAtg19との相互作用に重要な部位を同定した。この部位は、ヒトに至るまで完全に保存されており、種を越えて様々な選択的オートファジーに機能している可能性が考えられる。本年度は、Atg8とAtg19との相互作用様式に関して、in vitroで詳細に調べるため、Atg19およびそのホモログであるYol083w(積荷は明らかとなっていない)の大腸菌での発現・精製系を確立した。今後これら精製標品を用いて具体的な解析を進めていく予定である。
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