本研究代表者の所属する研究室では以前、Statファミリーの転写因子Stat3に結合してその活性化を制御する新規Zinc fingerタンパク質Eziを同定した。しかしながら、Stat3活性制御におけるEziの作用機序や、Ezi自身の持つ独自の生理機能についてはほとんど明らかとなっていない。そこで本研究課題では、哺乳動物細胞株や初代培養細胞を用いた細胞レベルでの解析と、マウスやニワトリ胚、ゼブラフィッシュ胚を用いた個体レベルでの解析とを組み合わせて行うことで、Eziの生理機能とその分子基盤を解明することを目的としている。その上で今回、Eziが細胞内で主に核に局在しているという点に着目し、その核局在化のメカニズムについての細胞レベルでの解析を行った。Eziの変異体シリーズを作製して、それらの細胞内での局在を検討した結果、EziはZinc fingerドメイン内に、少なくとも二つの独立した核移行シグナル(NLS)を有することが明らかとなった。これらはいずれも、いわゆる「典型的な」NLSには該当していなかった。一方で、Eziは核と細胞質の間をシャトルするタンパク質であることを見出し、その核外移行に必要な領域は、NLSとは異なり、EziのN末端領域に存在することを示した。すなわち、Eziの核移行および核外移行はそれぞれ異なるメカニズムにより制御されており、細胞内におけるEziの核への局在はこれらの動的な平衡状態により規定されることが示唆された。以上の結果については、すでに今年度の国内学会において発表を行い、また、論文投稿の準備中である。さらにその後の解析から、Eziに結合して、その核移行に必須な役割を担う分子を同定しており、現在、この分子によるEziの核移行の制御機構と生理的な意義についての詳細な解析を進めている。
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