研究課題
本年度はF-BAR/EFCドメインを持つチロシンキナーゼサブファミリーFerのアクチン骨格制御における役割を解析した。COS7細胞内にGFP-Ferを発現させるとlamellipodia構造を誘起し、この構造を優性不活性型Racの共発現によって抑制された。チロシンキナーゼ活性を持たないFer D742Rや自己リン酸化部位の変異体であるFer Y714Fではこのような現象は観察されなかった。興味深いことに、F-BAR/EFCドメインを欠損した変異体(Fer・F-BAR)においてもlamellipodia形成を誘起することは出来なかった。さらに、COS7細胞内にGFP-FerおよびMycタグを付加したCortactin(F-アクチン重合タンパク質)およびVav2(RacGEF)を共発現したところ、Ferのチロシンキナーゼ活性依存的なチロシンリン酸化が認められた。また、上述のようなGFP-Ferの過剰発現によって誘起されたlamellipodiaには、GFP-Ferと内在性Cortactinのリン酸化部位に対する特異的抗体(抗pTyr421)のシグナルが共局在することが観察された。これらの結果はFerチロシンキナーゼがF-BARドメインを介したリン脂質との相互作用によって細胞膜に局在し、その形状を制御すると同時に(1)Cortactinのチロシンリン酸化によるRacの活性化、(2)Vav2のリン酸化によるRacの活性化を引き起こすことによってlamellipodia形成を誘導することを示唆している。
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Cancer Research 67(20)
ページ: 9666-9676