研究概要 |
細胞は熱、ウイルス感染、栄養分の欠乏といった様々なストレスにさらされるとほとんどのタンパク質合成を停止させ、ストレスに対抗する。このときmRNA-タンパク質凝集体・ストレスグラニュールが細胞内に形成され、ストレス依存的な翻訳制御に関わる構造体として近年注目を集めている。コンポーネントとしては、mRNA、RNA結合タンパク質群(TIA-1, PABPなど)、eIE2を除く翻訳開始因子群が知られている。リボゾーム構成因子がすべてそろっていないことから、ストレスグラニュールは翻訳が不活化されたmRNAを一時的に収納する凝集体であると考えられている。本申請研究では、mRNAの翻訳制御を司るmRNA凝集体・ストレスグラニュールの形態形成機構を明らかにするために、ストレスグラニュールに局在することが知られているTIA-1をベイトとした酵母ツーハイブウッド法を行い、ストレスグラニュール構成因子を探索した。その結果、約10個のTIA1結合候補蛋白質を同定した。そのうちの一つCUGBPはmRNA結合蛋白質で、mRNAのスプライシング、翻訳開始、mRNA分解といったmRNAにまつわる様々な過程に関与することが知られている。CUGBPはストレスグラニュールのみならずmRNA分解の場と考えられているP-bodyにも局在し、ダイナミックにこれらの構造体内外を移動していることをFRAP(fluorescence recovery after photobleaching)法により明らかにした。さらにこの蛋白質が持つ2つのRNA結合ドメインをつなぐリンカー領域が、両構造体への移行に必要であることがわかった。これらの結果をまとめ、Experimental Cell Researchに発表した。
|