骨吸収を担う破骨細胞の分化・成熟は、受容体RANKとアダプター分子TRAF6によるシグナル伝達機構によって制御されている。本研究は、RANK/TRAF6シグナルの全体像を明らかにすることにより、破骨細胞が関与する骨疾患治療への応用を目的とする。以下に本年度の研究によって得られた成果を報告する。 1.TRAF6シグナルの増強を担うRANK細胞質領域の決定 申請者は以前、ヒトCD40受容体の細胞外領域とマウスRANK細胞内領域からなるキメラ受容体をマウス破骨前駆細胞に発現させ、抗ヒトCD40抗体で刺激し破骨細胞形成を誘導する実験系を確立した。さらに、RANKにはTRAF6結合部位以外にも分化誘導に必要な領域が存在し、それはTRAF6シグナルを増強する結果を得ている。そこで、その領域を決定するために、キメラ受容体のTRAF6結合部位以外を80a.a.ずつ欠損させた変異体を作成し、破骨細胞分化誘導能を評価した。その結果、424-529a.a.領域欠損変異体でのみ分化誘導活性が消失した。しかし、この領域の欠損は、TRAF6下流の転写因子NFκBの活性化には影響を与えなかった。よって、424-529a.a.領域は、破骨細胞形成を制御する新たなRANK細胞質領域であることが明らかとなった。 2.RANK/TRAF6シグナル依存的に発現制御される遺伝子の同定 ラット由来破骨前駆細胞をRANK-ligandで刺激し、6、24時間及び破骨細胞が形成する48時間後にmRNAを回収し、ラット由来DNAチップを用いて解析した。その結果、4倍以上発現が誘導された遺伝子として156遺伝子を同定した。そのうち、破骨細胞形成への関与が未報告の遺伝子は104遺伝子であった。現在、これらの遺伝子に対してRNA干渉によるknockdownを行い、破骨細胞形成に必須の遺伝子の探索を進めている。
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