研究概要 |
放線菌において,タンパク質のチロシン残基リン酸化を介したシグナル伝達機構はほとんど明らかになっていない。本研究では,放線菌Streptomyces(S.)coelicolor A3(2)に存在するチロシンリン酸化タンパク質を同定するとともに,それらタンパク質による形態分化・抗生物質生産制御機構を明らかにすることを目的としている。 これまで,S.coelicolorのチロシンリン酸化タンパク質として,SCO2364およびSCO5717を同定している。しかしながら,S.coelicolorにおいて,これら以外にもチロシンリン酸化タンパク質は多数存在する。本年度は,さらなるチロシンリン酸化タンパク質の同定を推進した。これまで,S.coelicolorからのチロシンリン酸化タンパク質の取得は,抗ホスホチロシン抗体を用いた免疫沈降法により行っていたが,あまり効率がよくなかった。そこで,同抗体を用いたイムノアフィニティークロマトグラフィー法を開発し,チロシンリン酸化タンパク質の取得を行った。その結果,効率よくチロシンリン酸化タンパク質を取得することができるようになった。次年度は,取得したタンパク質について,迅速に同定を行っていく。一方,チロシンリン酸化タンパク質の機能を明らかにするため,既に同定したタンパク質の機能解析も推進した。これまで,SCO5717遺伝子をS.coelicolorに導入すると,増殖の遅延および色素性抗生物質の生産抑制が認められることを明らかにしている。そこで,SCO5717の機能をさらに明らかにするため,S.coelicolorのSCO5717遺伝子破壊株の作製を試みた。本年度は,SCO5717遺伝子を破壊するためのベクターを構築した。次年度は,破壊株を作製し,形態分化・抗生物質生産に及ぼす影響を調査する。
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