マウスの発生において長期造血再建能を示す造血幹細胞は胎生11.5日より大動脈-生殖原基-中腎(AGM)領域で生じる。我々はAGM領域の分散培養の解析からCD45^<low>c-Kit^+細胞集団が造血幹細胞を含むことを明らかにした。そこで培養を経ずにAGM領域より直接得た細胞について検討を行った。 1)培養を経ずに胎生11.5日胚AGM領域より直接回収した細胞についてCD45およびc-Kitの発現強度に基づいて分画し、それぞれの細胞集団についてin vitroでの造血能を解析すると、AGM分散培養の結果と同じくCD45^<low>c-Kit^+細胞集団が最も高い造血能を示した。このことより胎生11.5日のAGM領域において、分散培養で認めた集団と同様なマーカー蛋白質の発現を示し、高い造血能を持つ未分化な細胞集団の存在を明らかにした。 2)AGM領域由来CD45^<low>c-Kit^+細胞は、胎生9.5日でわずかな数を認め、胎生10.5日および胎生11.5日で細胞数が増加し、胎生12.5日では細胞数が減少し、胎生13.5日以降では認めなかった。また、in vitroにおける造血活性は、いずれの胎仔においてもCD45^<low>c-Kit^+細胞が最も高かった。このことよりCD45^<low>c-Kit^+細胞の出現が、AGM領域の造血能が高い時期と一致していることが明らかとなった。 3)胎生期における他の造血器である卵黄嚢、肝臓でもCD45^<low>c-Kit^+細胞を認め、in vitroの造血活性がCD45およびc-Kitの発現強度に基づいて分画した他の領域よりも高いことを見出した。また、胎盤については、CD45^<low>c-Kit^+細胞は認めず、CD45^+c-Kit^+細胞に最も高い造血能を認めた。このことよりCD45^<low>c-Kit^+細胞が複数の胎生造血器において共通な未分化細胞である可能性が示唆される。
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