細胞は細胞周期の初期段階で外的刺激に応答し、ヒストンアセチル化メチル化を伴うクロマチン構造変化により遺伝子発現パターンが変わり、これによって細胞の増殖分化及びアプトーシスへの運命が定められるとされている。JDP2(Jun dimerization protein 2)はヒストンアセチル化を抑制することにより分化増殖を制御する因子として研究が進められている。我々はJDP2ノックアウトマウス(JDP2-KO)の初代繊維芽細胞(MEF)およびJDP2強制発現脂肪前駆細胞3T3-L1細胞を用いた脂肪細胞分化系においてJDP2が分化抑制的に働くことを示してきた。今回新たにクロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いた解析により、JDP2が分化制御因子の一つであるC/EBPdeltaの転写調節領域に結合してHDAC3をリクルートし、付近のピストンのアセチル化を抑制することによって転写抑制を行なっていることを示唆するデータが得られた。また、JDP2-KOマウスの組織染色法によりScapulaeにおいて野生型では通常褐色脂肪細胞が現れるのに対して、JDP2-KOマウスでは白色脂肪細胞が優先的に現れることが示された。このことはJDP2が白色脂肪細胞の分化に対して抑制的に働いているというMEF細胞分化系での結果を支持するものである。これらの結果は以前の結果とまとめて現在論文投稿中である。また、JDP2-KOマウスのMEF細胞は長期間培養可能であることから、JDP2の細胞増殖老化関連遺伝子発現への影響を経時的に解析している。現在のところJDP2は主にp16INK4a、p19ARF等の細胞増殖抑制因子の発現を促進させているとの結果が得られているが、詳細については研究が進行中である。
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