平成18年度には未分化マウスES細胞におけるAPCユビキチンリガーゼ活性阻害因子Emi1の発現がOct-4により実際に制御されているのか、また、Emi1の発現制御がES細胞の分化にどのような影響を与え得るのかという点について検討するため、以下の解析を行った。 1)未分化ES細胞におけるOct-4を介したEmi1発現制御の可能性の検討 (1)Emi1プロモーター領域へのOct・4結合の有無の検討 (1)未分化ES細胞内にてEmi1プロモーター領域へのOct-4の結合が認められるか、ChIP解析により検討した。 (2)Emi1のプロモーター領域におけるOct-4との結合に重要な配列の決定および他の転写因子を介した結合の有無について検討するため、未分化ES細胞抽出液を用いたゲルシフトアッセイを行った。 以上の結果、少なくともin vitroにおいてはEmi1プロモーター領域中の転写開始部位近傍にOct-4が結合し得ることが示された。 2)1)以外の分子機序による、未分化ES細胞特異的なEmi1発現制御機構の有無の検討 (1)転写レベルでの発現制御機構 (1)Oct-4以外の転写因子として、どのようなものがEmi1遺伝子の転写制御に関与し得るのか、データベースの検索により候補因子の結合部位を同定した。またEmi1プロモーター領域の系統的な変異解析による重要配列の解析を行った。 Emi1の転写制御領域にはE2F転写因子結合部位が複数個存在し、その転写活性はE2F1-3により顕著に促進された。また、これらのE2F結合部位への変異の導入は、未分化細胞では転写活性の抑制、逆に分化誘導細胞では活性促進を引き起こすことから、細胞の分化状態に応じ、異なった転写因子複合体が形成され得ることが示唆された。
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