平成19年度は直接発生型ウニ:ヨツアナカシパンと間接発生型ウニ:オカメブンブクからwnt8遺伝子の転写調節領域(モジュールA:以下Aと略す)相同領域を単離した。この研究の過程でヨツアナカシパンのwnt8の発現パターンが間接発生型ウニ類のwnt8の発現パターンと大きく異なっていることを発見した。ヨツアナカシパンのAについてはリポーター遺伝子発現コンストラクトの作成を行い、平成18年度作成のパフンウニ、ハスノハカシパン(ともに間接発生型ウニ)のコンストラクトとあわせて機能解析実験をおこなった。3種(バフンウニ、ハスノバカシパン、ヨツアナカシパン)のコンストラクトを用いた機能解析実験から、以下の結果を得た。(1)3種のウニのうち間接発生型ウニ2種については、Aがwnt8の時間的・空間的発現パターンをコントロールする機能をもっていた。(2)ヨツアナカシパンのAにも転写活性化能はあるが、時間的・空間的調節能力は不十分だった。(3)3種のウニのAは塩基配列がかなり異なっているにもかかわらず、別種の間接発生型ウニ胚に導入した場合、その種のwnt8の時間的・空間的発現パターンを再現できた。一方、(4)直接発生型ウニ胚中では3種のAは転写活性を持つものの、空間的・時間的なコントロールが不正確だった。上記の結果をふまえ、当初の研究目標である間接発生型ウニ:ハスノハカシパンのA内の新規転写調節因子結合サイトの同定をおこなう。さらに発展研究として、直接発生型ウニ:ヨツアナカシパンとハスノハカシパンのAの機能と構造の比較から、ヨツアナカシパンのwnt8転写調節機構の進化の原因を転写調節機構のレベルで解明し、遺伝子発現調節領域の構造進化と機能進化の関係の理解をめざす。
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