平成20年度はハスノハカシパン、バフンウニ、ヨツアナカシパンのwnt8遺伝子近傍のモジュールA相当配列(以下、A領域と略す)の塩基配列を比較し、モジュールの構造進化と遺伝子発現調節機能の進化の関連性について検討した。具体的にはA領域内に保存されていることが予想される機能エレメントを塩基配列解析ソフトウエアによって推定し、そのエレメントの機能をエレメント欠損コンストラクトの胚内注入実験で解明した。現在までに、重要なエレメントの同定および機能解析が終了し、現在、予想される新規転写調節因子結合サイトの絞込みの段階に進んでいる。 発展研究として、直接発生型ウニ : ヨツアナカシパンのwnt8遺伝子のA領域の詳しい機能解析研究をおこなった。A領域を結合したリポーター遺伝子の導入実験の結果、ヨツアナカシパンのA領域は間接発生型ウニの胚内では間接発生型ウニのA領域と同等の空間的・時間的転写調節能を発揮するにもかかわらず、ヨツアナカシパンの胚内では不完全な空間的・時間的転写調節能しか発揮できないことがわかった。また、間接発生型ウニのA領域もヨツアナカシパン胚内では不完全な空間的・時間的転写調節能しか発揮できなかった。これらの結果は、ヨツアナカシパンのA領域の塩基配列がさほど大きく変化していないだけでなく、A領域に結合して転写活性化に関与する転写調節因子がヨツアナカシパンと間接発生型ウニで大きく異なっていることを示唆している。現在、ヨツアナカシパンA領域の塩基配列の詳しい解析と並行して、ヨツアナカシパンと間接発生型ウニの母性転写因子の差異に注目した研究をはじめている。
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