研究課題
本年度は、細胞学的解析のためのトランスジェニックメダカ作製と、低分子化合物である阻害剤を用いた分子レベルでのメダカヒレ再生過程の解析を行った。まず、ヒートショックプロモーター下流に蛍光色素であるEGFPをつないだコンストラクトを導入したトランスジェニックメダカを作製し、そのライン化に成功した。今後はこのトランスジェニックメダカを用いて、再生時における様々な細胞の挙動を詳細に解析していきたい。また、ヒレ再生過程における分子メカニズムの解明のため、シグナル伝達経路阻害剤を用いて、メダカのヒレ再生に関与するシグナル伝達経路の特定とその役割を検討した。フォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)は細胞移動や増殖、アポトーシス、細胞内小胞輸送と言った種々のメカニズムに深く関与していることが知られている。PI3Kの阻害剤であるLY294002(LY)をヒレ切断後のメダカに投与すると、ヒレ再生が阻害されること、また、このLY処理による再生阻害は、PI3Kの下流分子であるAkt依存的に起こることがわかった。さらにLY処理により再生が阻害されたヒレでは、ヒレ内部に存在する血管の再生がほぼ完全に阻害されていた。また、LY処理により再生芽の形成が抑制されていること、それに伴う細胞の増殖が著しく阻害されていることが明らかになった。これまで、再生過程における血管の役割についての報告はほとんどなく、今回の研究結果は再生メカニズム解明への新たな知見をもたらしたと言える。今後は、ヒレ再生でのPI3Kと血管再生のつながりについて、さらに深く調べていきたいと考えている。
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Development, Growth and Differentiation 49
ページ: 145-154
Developmental Biology 293
ページ: 426-438