研究概要 |
コオロギ胚発生において前後軸パターン形成に関与する遺伝子の発現パターンおよび機能の解析を行った.前者については,ショウジョウバエと異なる細胞環境における転写因子の分布パターンを明らかにするため,caudal (cad)やorthodenticle (otd)等の主要な遺伝子について,リアルタイムPCRとin situ hybridizationを併用し,卵におけるmRNAの局在を解析した.これらのmRNAについて卵の前極あるいは後極側への局在を示すデータを得た.さらに詳しい解析を進めている.また,コオロギではこれまで技術的に困難であった卵のwhole-mount in situ hybridizationの方法を確立すべく,ハウスキーピング遺伝子(細胞質アクチン遺伝子)をポジティブコントロールとして実験を行った.その結果,少なくとも産卵後6時間の卵にっいてはin situ hybridizationによる解析が可能となった.今後この方法をさらに改良し,cadやotdの発現解析を行う予定である.さらに,RNAi法を用いてotdの機能解析を行い,頭部から腹部の一部までの形成にこの遺伝子が必須であることを明らかにした.さらにotdがギギップ遺伝子の一つであるKruppelの発現を正に調節していることもRNAiを用いた実験により明らかになった.本年度の研究により,コオロギの初期胚発生においてはcadやotd遺伝子の産物の局在が位置情報となり頭部,胸部の形成を制御している可能性が示唆された.
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