本年度は1.共焦点レーザー顕微鏡を用いたホヤ胚の時間空間的イメージングと三次元胚発生データベースの構築、1及び2.細胞極性に関わる遺伝子と組織特異的プロモータ領域の配列クローニングを行った。 1に対しては初期胚発生における細胞極性の関わる原腸陥入運動の詳細な三次元イメージングを行い、そこから得られた画像データを利用しコンピュータによる定量的基盤の構築をするために、卵から発生17時間後の孵化幼生までの発生段階を正確に30分毎に区切り、各発生ステージで固定後、細胞膜をAlexaPhalloidine546蛍光試薬で標識し共焦点顕微鏡によるイメージングを行った後、コンピュータ上で三次元再構築を行った。共焦点レーザー顕微鏡を用いた精密な共焦点顕微鏡撮影と3次元画像処理装置を用いた3次元再構成を組み合わせることで複雑な細胞形態の動態を個体全体レベルで時間・空間的に捉えることができた。ダイナミックな細胞動態を個体全体レベルでイメージングし360度あらゆる軸から胚のダイナミクスを同時にみられる系はおそらく世界で初めての試みであり新たな知見を得た。今後、核あるいは紡錘体を膜と二重に蛍光標識することにより細胞内の分裂方向や周期の情報も含んだ胚全体の三次元画像の取得も行う予定である。このような三次元胚発生画像データを含んだ「ホヤ胚発生三次元データベース」を構築し国内・国際学会で発表した(ABA : Ascidian Body Atlas、論文投稿中、発表と同時に公開予定)。2に対してはこれまでに細胞極性に関わる遺伝子のクローニングと組織特異的プロモータの単離を目指しホヤゲノムおよび、ホヤ初期胚cDNAライブラリーからそれぞれ細胞極性関連遺伝子を3つと表皮、脊索、神経で特異的に発現する組織特異的プロモータをそれぞれ単離した。今後イメージングにより得られてきた画像データはコンピュータを用いて解析され、形態形成運動に関わる種々の情報(タンパク質の位置・速度情報や空間的力学的情報)を抽出し、細胞一つレベルの定量的解析を行う。これら情報の抽出にあたってはそのための画像処理アルゴリズムの開発を行い、既存の画像解析ソフトウェアも活用する予定である。
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