研究概要 |
平成19年度は、骨格筋パターニング機構をメダカとヤツメ ウナギで比較する目的で、生きたヤツメウナギ胚を用いた実験を行った。まず、ヤツメウナギの側板中胚葉であると考えられる領墟をDiIでラベルし、アンモシーテス幼生期まで飼育し固定した。次に胚を凍結切片にし、筋肉をMF20抗体で染色して観察した。その結果、DiIセラベルされた側板中胚葉と体節由来の筋肉は細胞が混じり合わないことが分かった。顎口類の移動性軸下筋では体節由来の筋芽細胞が側板中胚葉の環境下で分化するが、今回の実験からはヤツメウナギではそのような細胞間相互作用が起こらないという可能性が示唆された。また、皮筋節の発生に必須であると予想されるPax3/7遺伝子に対するモリフォリノオリゴヌレオチドを合成し、受精卵に顕微注入して発生させた。モリフォリノを注入された胚の多くに、頭部が前方に伸長できないという表現型がみられた。 メダカでは、筋肉特異的microRNAであるmiR-1,miR-206,miR-133に対しLNA(locked-nucleic acid-modified oligonucleotide)プローブを作製し、in situハイブリダイゼーションを行って発現領域を同定した。その結果、miR-206はメダカ胚においてすべての骨格筋に発現するのに対し、miR-1は体幹部の筋肉には発現するが、移動性軸下筋である対鰭の筋肉には発現しないことが分かった。現在、このようなmicroRNAの発現領域の違いと、移動性軸下筋に特異的な遺伝子制御機構との関連を明らかにするため、各発生段階におけるより詳細な発現様式を調べる実験を行っている。
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