研究概要 |
後方に向かって尾部を伸長させながら繰り返し構造を形作る発生様式は、節足動物門のボディープランを特徴づける重要な形質である.ところが、節足動物であっても、モデル動物のショウジョウバエは例外的にこのような発生様式を示さない.そのため、節足動物の尾の発生を制御する仕組みに関する知見はほとんどないのが現状である.本研究は、私たちがモデル動物として開拓したオオヒメグモ(節足動物、鋏角類)を用いて、尾部(クモでは尾葉と呼ぶ)に特異的に発現する遺伝子を網羅的に探索し、それらの遺伝子の機能を検討することを目的とする.19年度に得た研究成果は以下の通りである.1、尾葉形成期の均一化cDNAライブラリーを用いてEST解析を行い、8,000クローン以上の5'末端配列を決定した.2、蓄積した配列情報を利用してマイクロアレイ解析を行い、[正常胚]と[尾部が全く形成されないpatched dpp RNAi胚]の間の遺伝子発現の違いを調べた.ポジティブコントロールとなる遺伝子の発現量の違いを検出することができたので、一連の実験が期待通りに行えたことが確認された.マイクロアレイ解析でポジティブと判定されたクローンについて、in situハイブリダイゼーションによって特異的発現を調べたところ、新たに20程度の尾葉特異的遺伝子クローンを同定することができた.3、18年度と19年度に見出した尾葉特異的遺伝子クローンについて、順次RNAiによる機能解析を行ったが、研究期間内に"尾部形成"遺伝子として同定できた遺伝子はなかった.まだ、機能解析のできていない遺伝子クローンが多数有るので、今後それらの解析を進める必要がある.
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