白骨からの年齢推定法はこれまで複数開発されている。しかし、大腿骨を用いた年齢推定法は現在まで報告かない。そこで、年齢・性別既知の近現代日本人を用いて、大腿骨頭窩からの年齢推定法を開発する目的で、年齢・性別既知の近現代日本人551個体を調査した。ちなみにこの個体数は過去に開発された年齢推定法のなかで二番目に大きいものである。その結果、大腿骨頭窩の形態は7つのフェイズに分けられ、それぞれ年齢があまり重なり合うことなく段階的に区分されていることが判明した。そのため、各フェイズの形態から年齢を推定することが可能である。また、性差はいずれのフェイズにも見られないため、この方法は性による影響を受けないことも明らかとなった。左右の別も調査しているが、左右でフェイスが異なる個体は全体の8%以下であり、2つ以上フェイズが離れる個体は全て、下肢骨における骨折や骨変形を示していた。そのため、左右の別もこの方法にあまり影響を与えないと考えられる。また、信州大学、新潟大学所蔵の年齢・性別既知の近現代日本人100個体を調査し、年齢推定法の検証を行ったところ、全資料の92%の標本が正しい年齢推定幅に収まり、大腿骨頭窩を用いた年齢推定法は非常に成績が良いことが判明した。また、年齢だけではなく、大腿骨頭の計測値から性別判定ができるかも同時に調査しているが、これも正答率は88.0%と高い値を示しているため、実用可能である。以上のことから、大腿骨頭さえあれば、その個体と性別と年齢が推定可能であるという極めて画期的な結果を得ることが出来た。
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