平成18年度には、無顎類の感覚地図に関する研究を行った。ヤツメウナギ胚の上唇、下唇にデキストランを注入し、そこにある三叉神経繊維を逆行性にラベルして、その投射パターンを解析した。その結果、ヤツメウナギの三叉神経はマウス同様の方式で後脳に投射することが明らかとなった。さらに、投射した神経をHoxa2遺伝子の発現パターンと比較しながら詳細に解析したところ、ヤツメウナギの三叉神経は後脳の広い領域でコラテラル(微小突起)を出している事が判明した。この結果は、コラテラルの形成がロンボメアの一部に限局されているマウスとは大きく異なっている。つまり、ロンボメアに依存した体制感覚地図の形成機構は、ヤツメウナギの段階ではまだ確立されていなかったことが明らかとなった。つまり、感覚地図は軟骨魚類から哺乳類に至る過程の何処かで作られたといえる。この結果は2006年夏にプラハで開催された国際学会(European Society for Evolutionary Developmental Biology The first and founding meeting)で口頭発表を行い、好評を得た。現在、Brain Research Bulletinに投稿すべく、論文を執筆中である。 今年度は、さらに爬虫類(スッポン)、両生類(アフリカツメガエル)の胚を入手し、ヤツメウナギと同様の手法を用いて実験を行う。さらに、八月にはフランスのIGBMC研究所に赴き、そこでFilippo RIJLIチームリーダーと協力して、鳥類(ニワトリ)を用いて実験を行う予定である。これらの研究を進め、感覚地図の起源を明らかにし、その進化過程をより詳細に解析する予定である。
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