サトイモ品種愛知早生と品種〓芋におけるAl障害発現とAl耐性の機構に関する検討を進めた。藪芋は、土垂よりもAl耐性を有していた。Alによる障害発現は、地上部より根において顕著であった。根では冠根の崩壊や特に根先端部の表皮組織の開裂が走査電顕で観察され、エバンスブルー染色により原形質膜損傷が根の先端部で顕著に発生することが認められた。根におけるAl含量は、〓芋よりも土垂で多かった。特に根の先端部では、Alが多量に集積した。Alが集積した根の先端部では、脂質過酸化が顕著に発生することがシッフ試薬染色により示され、活性酸素がAl障害発現の一要因として関わっていると推察された。本研究では、サトイモの根先端部に限定して形成されるシュウ酸カルシウム結晶を含む異型細胞(結晶細胞)が皮層内の周辺部に管状に配置している構造「結晶細胞管状配列」を見出した。エリオクロムシアニン染色およびルモガリオン蛍光試薬処理により、Al処理した根の先端部内のAlは、結晶細胞管状配列を境界に外側で多く、その内側で少ないことが認められた。個々の結晶細胞内にもAlの顕著な集積が認められた。Alは根の先端部の中心柱の外周にも多く存在した。ベルベリン蛍光試薬処理から、Al処理した根の先端部では内皮において明瞭にカスパリー線が認められた。これらのことから結晶細胞管状配列やカスパリー線は、Alの根内部への進入を制限し、Al耐性機構に関与している可能性が示された。土垂と〓芋の根内部および根からはシュウ酸が多く分泌され、その量は土垂よりも〓芋で多かった。NMR分析により根内部では、AlはAl:シュウ酸=1:3のAl-シュウ酸複合体の形態で存在していることが示された。これらのことよりサトイモではAl耐性にシュウ酸が生体内外において強く関与していることが示された。
|