研究概要 |
登熟期間中における出穂前蓄積デンプンの分解機構と,分解後の穂への転流機構を解明することを目的として,本年度は最初に,葉鞘でのデンプン分解に関与していると考えられる酵素の解析を進めた. シロイヌナズナの葉のデンプン分解には,葉緑体に局在するβアミラーゼが関与している.そこで,私はイネ完全長cDNAデータベースからβアミラーゼをコードすると推定される遺伝子を検索し,葉緑体移行シグナルを有する3つの配列を得た.それら3つの遺伝子のうち2つの塩基配列はほぼ同じで,2つの塩基が挿入されているかどうかの違いだけであった.3つの遺伝子をそれぞれRBamy1;1,RBamy1;2およびRBamy2と命名し,その推定アミノ酸配列をもとにペプチド抗体を作成した. 出穂期前後における葉鞘のRBamy1およびRBamyの転写量をRT-PCR法で解析した結果,RBamy2の転写量が出穂後のデンプン分解が生じているときに多くなっていた.一方RBamy1の転写量は,出穂前と出穂後において大きな違いがなかった.現在,作成したペプチド抗体を用いて,タンパク質レベルでの発現解析を進めている.また,これらβアミラーゼの機能解析を進めるため,大腸菌において融合タンパク質を発現させるためのベクターを構築した. 登熟期の葉鞘において,分解されたデンプンは,スクロースへと変換されて穂へと転流されるので,葉鞘におけるスクロース合成に関与する酵素の解析も進めている.出穂前の葉鞘におけるスクロースリン酸合成酵素(SPS)活性は,デンプンを多く蓄積する日本型品種の方がインド型品種よりも高いことがわかった.さらに,SPSをコードする5つのイネ遺伝子が報告されており,それらの転写量を様々な器官において解析した結果,それら遺伝子発現には器官特異性があることが明らかになった.
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