研究概要 |
イネにおいて出穂期に稈および葉鞘に蓄積するデンプンは, その後穎果の登熟に利用される. 出穂期以降, その蓄積デンプンが分解され, 穎果へと転流される分子機構を解明するために, β-アミラーゼに本研究では着目した. 具体的には, イネゲノムアノテーションデータベースおよび完全長cDNAデータベース上からβ-アミラーゼアイソフォーム遺伝子の情報を得て, そのうちOsBMY1, 2および9と名付けた3つの遺伝子について解析を進めた. OsBMY1, 2および9の転写レベルを各部位において解析した結果, OsBMY2が葉身, 葉鞘および出穂後節間での発現特異性が高く, 一方, OsBMY9は調査したすべての部位で転写が確認された. また, 出穂後のデンプン分解が著しいインド型品種の葉鞘においてOsBMY9の転写量が出穂期に増加したのに対し, 日本型品種の葉鞘では転写量が少なかった. 一方, OsBMY2は, インド型品種でデンプン分解が生じている時期に転写量が増加したのに対し, 日本型品種では出穂前から登熟期にかけて高いレベルで転写されていた. そこでOsBMY2と9の機能解析を進めるため, OsBMY2の組換えタンパク質を大腸菌内の可溶性画分に発現させることに成功した. 現在, そのβ-アミラーゼ活性を調査中である. またOsBMY2および9の発現抑制および過剰発現形質転換イネを作出するためのベクターを構築した. 出穂後の葉鞘でのデンプン分解に続くショ糖の合成の制御機構についても検討するため, イネの5つのショ糖リン酸合成酵素遺伝子(OsSPSI〜V)について出穂後の葉鞘で転写レベルを解析した. その結果, OsSPSVの転写量が出穂後に急激に増加することがわかった. このアイソフォーム遺伝子が出穂後のイネ葉鞘におけるショ糖合成に関与しているのかもしれない.
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