研究課題
本年度も昨年度と同様に、1)現在の水田における雑草群落と埋土種子群集の多様性の関係に関するデータの収集と、2)縄文時代および弥生時代遺跡の遺跡土壌発掘調査を継続して実施した。1)昨年度に実施した神奈川県葉山町の谷戸水田での調査に加えて、本年度は滋賀県下之郷遺跡における古代米復元水田および古代雑穀復元畠での調査を実施した。下之郷の水田は平野部に立地しており、葉山の谷戸に形成された水田とは異なる立地環境にある。この立地の違いが、埋土種子群集の堆積状況の違いによく反映されていた。すなわち、谷地形に形成された水田では、水田の中央部まで谷斜面に分布する森林からの葉や種子が流れ込んでいたが、沖積低地に形成されている下之郷の水田では、森林要素や周辺雑草の流れ込みが少なかった。そのため、水田雑草の種類組成と埋土種子組成の関係はきわめて良好であった。2)縄文時代と弥生時代でどのくらい雑草の多様性が変化したのかを知るために、縄文時代後期〜晩期の千葉県堀之内遺跡と、弥生時代前期の三重県筋違遺跡と滋賀県下之郷遺跡において、遺跡土壌の発掘調査を継続調査した。今年度は特に縄文時代の種子化石についてデータの収集を行い、あわせて既存の報告書から特に関東地方、近畿地方を中心とした地域での遺跡出土種子の記録を収集した。その結果、縄文時代の水田ではない氾濫原堆積物からも、いわゆる水田雑草と呼ばれている種類の雑草種子が出土することが分かってきた。その中には史前帰化植物と呼ばれるコナギやイボクサなども含まれている。ただし、来年度の調査を待ちたいが、その量的構成は、弥生時代に増加する傾向があるようである。
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Vegetation History and Archaeobotany 16
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