研究概要 |
登熟期の高温によって、イネ穎果の登熟特性や胚乳におけるデンプン生合成系酵素の遺伝子発現がどのように変化するのかを明らかにするために、以下のような実験を行った。 1.穎果の乾物重は、対照区(昼夜温26/20℃)に比べて高温区(昼夜温33/27℃)で数日早く推移し、最終的な玄米重は、高温区で対照区の16%減少した。 2.穎果のショ糖含量は、登熟期間中、対照区と高温区で大きな違いは見られなかった。 3.ADP-グルコースピロホスホラーゼ、デンプン合成酵素、デンプン枝作り酵素の登熟期の遺伝子発現を対照区と高温区で経時的に比較したところ、高温区ではADP-グルコースのAGPS2a、デンプン合成酵素のGBSSI、デンプン枝作り酵素のBEIIbの発現が低下した。 4.上記の遺伝子に関して、遺伝子発現の日変化を調査したところ、高温区で1日中発現が低く推移したものの、対照区との発現差はほぼ一定で、拡大する時刻は見られなかった。 5.高温区で発生した白未熟粒を走査電子顕微鏡で観察したところ、白濁部ではアミロプラストの発達不足・異常が見られた。 以上の結果より、デンプン生合成系酵素の遺伝子のうち、AGPS2a,GBSSI,BEIIbが穎果の玄米重低下や白濁化に関わる可能性が示唆された。今後は、代謝産物やデンプン特性などの調査を通じて、これら3つの遺伝子がコメの白濁に関わっているのかを明らかにしていく予定である。
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