研究概要 |
1.ミヤコグサへのcrtW遺伝子の導入と形質転換体後代の解析 海洋細菌由来のカロテノイド生合成遺伝子(crtW)を導入し過剰発現させたミヤコグサは,花色が黄色から濃い黄色またはオレンジ色に変化した.花弁からカロテノイドを抽出し,HPHCおよびTLCで分析したところ,本来ミヤコグサには含まれない桃色から赤色を示す数種のケトカロテノイドが検出された.また,花弁の組織切片を観察したところ,本来の黄色の有色体以外に桃色から赤色の有色体が含まれていた.これらの結果から,ミヤコグサの花色変化は新たなカロテノイドであるケトカロテノイド類が花弁で合成され蓄積した結果であることが明らかになった.さらに,この形質転換体の自殖種子を播種し,後代におけるcrtW遺伝子の発現および花色を調査した.その結果,形質転換体後代においても,crtW遺伝子の発現,ケトカロテノイド類の合成・蓄積が確認された.しかし,花色については,crtW遺伝子をホモで保持する系統を含む全ての系統で,形質転換体当代とほとんど変化がなかった.このことから,さらに劇的に花色を改変するには,crtW以外の遺伝子の導入によるケトカロテノイド含量の増加や,花弁特異的プロモーターによる花弁組織特異的なカロテノイドの合成・蓄積が必要であると考えられた. 2.新たなカロテノイド生合成遺伝子の導入およびベクターの構築 crtlやcrtZ遺伝子などのcrtW以外のケトカロテノイド合成遺伝子を含むベクターを構築した.タバコやシロイヌナズナなどにおいて,crtWに加えこれらの遺伝子を過剰発現させることによって,ケトカロテノイドの合成量を増加させる報告があることから,ミヤコグサの花色改変にも有効であると考えられる.現在,この新たなベクターをミヤコグサに導入中である.形質転換体が獲得され次第,花弁のカロテノイド含量および色などを調査する予定である.
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